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街達



地元・大田原の名店、すゞや食堂

大田原のそば・うどんのすゞや食堂といえば、市民で知らない人はいない。近隣のお客様も多いが、それよりも遠方から、わざわざやって来るかつてのファンも少なくないそうだ。お昼の混雑時には、次から次へと、客足が途絶えることがない。
場所は大田原高校すぐそば。学生にももちろん人気だが、近くに太田原警察署が引っ越して来た頃から、客層も変わってきた。パッと短時間で食べられるそばは、警察官に重宝され、出前も増えた。手軽なそばをよく食べる警察官には、そば通が多いそうだ。
今回の街達は、地元大田原で42年間、そばを打ち続けているすゞや食堂の店主、鈴木輝夫さんにお話を伺った。

「生まれも育ちも大田原。28歳の頃までは、家業の文具店を手伝っていたんです。そこから、お店のすぐ近くに太田原高校が出来て、その時に文房具っていうより即席ラーメンが学生にすごく売れたんだよね。何か新しいことが出来ないかな...と思ったのがきっかけです。」
最初はラーメン店の話もあったが、うどんなら時代が移り変わっても大丈夫...と叔父に勧められ、始めることにした。
「その叔父さんもちょうど、おそば屋をやっていたものだから、そこに修行に行ったんです。昔はバーナーなんてない時代だったからね、最初は薪で麺を茹でてたんだけど、いや、これが大変でね。四六時中、火の番をしていなくちゃならないから、休まる時がありませんでしたよ。それから石油バーナー、ガスバーナーが出来て、随分便利になりました。」

目を閉じても、足裏でも分かる感覚。

すゞや食堂の一番の特徴といえば、なんといってもその量。通常の平均的な麺の量は280gらしいが、すゞや食堂での量は400g。
「男性には好まれる量だけど、女性でもぺろっと食べる人もいますよ(笑)。うちはつけ麺が主流だけど、それなら麺が水分で伸びすぎないから、食べるのに多少時間がかかっても大丈夫。もっと大盛りにすることもできるしね。」
おだやかな笑顔でそばを打ちながらのインタビュー。
そば粉を混ぜた後、鈴木さんは身軽にひょいっと台の上に飛び乗った。体重をかけてそばを踏み、平らにならしていく。足裏から伝わってくる感覚で、そば粉の具合も分かるようです。繁忙期は、この台の上に乗る作業も、身軽には行かなくなるといいます。パタン、パタン、とそばを打つ音が作業場に響く。
朝5時から、作業はスタート。
「まぜる時間は7〜10分間。それでも焦るとダメ、水分が混ざらないから、そばがプツプツと切れちゃう。やっぱり時期で言えば、ちょうど蕎麦粉を収穫した10月〜11月の新蕎麦が最高だね。」 そば打ちが終われば、今度は切る作業。トン、トン、トン...こちらも一定のリズムが鳴り響く。寸分の違いもなく、正確にそばが仕上がってく。
「目を閉じていても太さが分かるし、練り具合は足の裏でも分かるよ(笑)。伸ばしたそばで一番美味しいのは、この端っこのところだね。」
そばは20分くらいで打ち上がるが、うどんはなかなかそうは行かず、2時間もの労力を費やすそうだ。
「もう40年近く、毎日この作業をやってるけど、いやいや、それでもなかなか蕎麦打ちの先生にはなれないねえ(笑)。」

愛すべき地元・大田原を見守り続けて。

すゞや食堂の裏手には、毎日そばを待っている、かわいらしいお客さんがいる。 「切れ端のそばやうどんを、いつも鳩やすずめにあげるんです。毎日決まった時間に集まってきますよ、みんなよく分かってるんですねえ(笑)。」
現在、すゞや食堂は鈴木さんの奥様と、長男ご夫婦の4人で切り盛りされている。2代目となる秀彦さんも、幼い頃からなんとなく、いつかこの食堂を継いでいくことを思い描いていたそうだ。 「ある日市役所にそばを届けにいったら、市長さんが奧から出てきて、『息子さんの作文が賞をもらったよ!』なんて言われたんです。なんのことだか、言われるまでさっぱり分からなかったんだけど、長男が書いたうちのそばの作文が入賞したらしくて、今でも思い出に残ってますねえ。」

鈴木さんが一番楽しみにしていること、それは地元在住の同級生との懇親会だ。子どもの頃の思い出話に華を咲かせる時が、一番の楽しみだという。何枚か集合写真も見せていただいた。 「昔はこの辺りで大田原の荒町といえば、すごく活気があって、発展していたんですよ。でもだんだんと、若い人たちも大学に進学して故郷を離れるようになって、今では寂しくなっていきました。商売をやっている家が息子を大学に出せば、後継者がいない。そうして街に人がいなくなっちゃうんだよねえ。」

伝統のスタイル、伝統の味を守り伝える。愛され続けたすゞや食堂は、今しっかりと、2代目である秀彦さんに受け継がれている。
「元気なうちは、ずっとそばを打ち続けますよ。もうこれが習慣になってるからね。」
そば好きな人の顔は見れば分かる、と鈴木さんは言う。そんなそば通がお店に来た時は、盛りにいっぱい乗せて食べてもらいたい、と思うそうだ。正確にそばを打ち、切る作業はもう鈴木さんの身体の一部になっている。


2010.6.11  取材・文=松島佐和子

Profile

鈴木 輝夫さん大田原市民に愛される、老舗のそば打ち名人
昭和14年生まれ。18歳の頃はスズキ文具店を手伝い、29歳よりすゞや食堂を始める。大田原交通安全協会副支部長、アジア学院大田原支部事務局、大田原ライオンズクラブ会員。柔道も3段の腕前だそうだ。

すゞや食堂さんへの連絡はこちらから。 電話:0287-22-3403 大田原市紫塚1-6-15
営業時間/11:00〜15:00、17:00〜19:30
定休日/月2〜3回(日曜)